村人Dが主人公になるまで

自分を変えたい。未来を変えたい。人生を変えたい。

(29)村人Dは隙間を埋める。

 

村人Dは本が好きです。

 

高校生の時はどの本がどの棚の何段目にあるか覚えているくらい本を読んでいました。

 

村人Dの通っていた高校は、図書館が教室棟から少し離れた不便な場所にあったので、もはや村人D専用の部屋でした。

 

図書館の予算を独り占めして本を買い漁るという暴挙もしていました。

(※公平になるように生徒全員に「図書館の本を選びに行きませんか?」とポスター等で告知されます。ですが村人D以外誰も来なかったので予算全額(二十数万円分)の本を村人Dと学校司書さんで選びにいくことになりました。夏季と冬季の2回。すこぶる楽しかったです。)

 

家庭訪問の時に、先生に自室を見られた時も「机も本棚も本しかないんだが?(教科書や参考書はどこにあるんだ(意訳))」と言われました。

 

教科書類は全部置き勉してました。

 

宿題も置き勉してました。宿題なんてやらないので置き勉というより置き去りにしていました。

 

本自体に価値はありません。

紙の集合体でしかありません。

本の価値は情報です。

 

村人Dが高校生の頃は電子書籍の黎明期でした。まだ紙が主流の時代でした。

よって読んだ紙の量でその人の持っている情報量がわかります。

 

1年間に読んだ本の数が全校1位の人には図書券が学校から贈呈されます。

村人Dは3枚もらいました。

 

 

とにかく本が好きなのです。

 

 

しかし、突然読めなくなりました。

 

うつの急性期。発症して一週間ほど。

 

薬の説明文が読めません。問診票に書いてある文字が読めません。

 

おそらく自分に絶望したのは「鬱になった自分」よりも「文章を理解できなくなった自分」の方が大きかったように思います。

 

 

今は集中力が以前よりなくなったとしてもそこそこ読めるくらいには回復してきました。

 

今は電子書籍も、紙媒体も、とても充実しています。

 

少しずつ、読めなかった時期に発売された本を読もうかなと村人Dは考え始めました。

 

辛かった時期を、今、埋めるように。

 

また「本って面白いな!」と心から思えるように。